君の知らない空

桂一が顔を近づける。
もちろん、周りを見渡してから。


「俺の会社は不動産業だけじゃなくて、いろんな仕事をしてる。俺は人探し専門、前に見た写真がそうだよ」


小さな声でゆっくりと話す桂一を見つめて、私は黙って頷いた。
桂一が彼を、小川亮を探している。
突きつけられた事実が胸を揺さぶる。


「他の社員や社長の仕事は本当に知らないけど、先輩からはヤバイ仕事だから関わるなと言われてる。とくに社長は敵が多いから命を狙われてると……関連会社とも仲が悪いから、そっちとの確執もあるんだって」


話し終えた桂一は私を見据えて、小さく頷いた。それは諦めに似た表情だと感じた。


「どうして、そんな会社に就職したの?」


「知らなかったんだ、先輩にいい仕事があるからって頼まれて……営業だって聞いてたんだけど入ったら探偵みたいな、こんな仕事で……」


桂一は人がいいから仕方なかったんだろう。世話になった先輩から頼まれたから、尚更断れなかったんだろう。


「でも待遇はいいんだ、前に話したけど給料はいいし、見つけた時の報酬は大きいからさ」


まだ先輩を庇おうとしている。
そんな厄介な社長の元、いつどうなるか分からないような会社で働くなんて、正直なところ辞めてほしい。


「人を探すのは誰かの依頼? 見つけたらどうするの?」


「さあ……そこまでは知らない。ただ探して見つけるだけ、接触するなって言われてる。見つけたら主任に連絡して、主任が他のグループの社員を連れて来るまで見張ってるだけだから」


「見つけるだけで? それだけの仕事?」


桂一の仕事に不安を抱かずにはいられない。


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