君の知らない空

「橙子? どうしたの?」


「わっ……あ、優美……」


不意に現れた優美に驚いて、私は思いっきり肩を揺らした。してやったりと言いたげに笑う優美の手にはメモ用紙で折った小さな箱。そこにお菓子が山盛りに入ってるのが見える。


「はい、調子悪いの? 朝から何か暗いよ?」


優美がお菓子の入った箱を机に置いて、再び顔を覗き込む。


「うん、ありがとう。大丈夫だけど、息苦しいかも」


小声で返すと、優美はフロアを見渡した。


「確かにね、でも仕方ないところもあると思うよ? 疑われるようなことした方も悪いと思うし……火の無い所に煙は立たぬって言うでしょ?」


「でも……見てるだけでも辛いものがあるよ、気になるなら話したらいいのに」


もっともだと思うけど、あまりにも大人げない気もする。
目に付くように悪口を言ったり、美香にだけお菓子を配らなかったり、業務回覧を美香に回さなかったり……まるで学生のイジメみたいだ。


「話してもダメだから仕方ないでしょう? 辞めたら一区切りつくと思うけどね……」


「冷たいね……辞めさせたいの?」


「この会社の平和のためだと思うよ、一度拗れた関係を修復するのは難しいし。今までだってそうだったじゃない」


これまでにもオバチャンの機嫌を損ねたため、美香と同様の仕打ちを受けて辞めさせられた人は何人かいる。同じように、美香を辞めさせようとしているんだ。


でも、乗っ取られようとしている会社に平和とはあり得るのだろうか。
自分たちがどうなるかさえ分からないのに。



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