君の知らない空


真っ白に輝く大きなセダンタイプの車の後ろには、真っ黒なワンボックスの車。
間違いない。
美香の彼氏、じゃなくてお兄さんだと。


白い車の後部座席から降りてきた若い男性は、シャツに細身のパンツの姿で綺麗な顔立ちをしている。
そう言われると、美香に似ているように見えるかも……


黒いワンボックスからは数人の厳めしい顔をした長身の若い男性が二人。長身で厳つい顔で病院の玄関を見回す。
咄嗟に目を逸らした。じっと見ていたら、また睨まれてしまうかも。


傍を通り過ぎていく彼から、ふわっと立ち込める上品で甘い香り。美香と同じ匂いだ。


玄関を抜けて病院の中へと入ってからも、彼の隣を歩く厳めしい男たちは回りを気にする素振りを見せる。
何を気にしているんだろう。


桂一の言っていたことを思い出す。
『社長には敵が多く、命を狙われている』という言葉の真実味が増すような気がする。今、私の目に映る彼らは秘書というよりも立派なボディガードだ。


先週に続いて今週も病院に来るなんて、どうしたんだろう。受付時間は過ぎているから、面会だろうか。


知らぬ間に後を追っていた。
予想通り、彼らは受付や会計等の外来窓口を素通りしてエレベーターへとまっすぐ向かっていく。


彼らの乗り込んだエレベーターのドアが閉まるのを確認して、行き先をチェックする。上昇する階数は7階で停まった。
3階から7階は入院病棟、やはり誰かの面会に来たのは間違いないようだ。


私も隣に待機していたエレベーターに乗った。もちろん、行き先ボタンは7階を押して。


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