君の知らない空
「すみません、僕の言い方がまずかったです。高山さんは何にも怪しくないですよ。ただ最近、社内の人事の入れ替わりが激しいなぁと思って……僕の気にしすぎかもしれませんけどね」
ようやく江藤が助け船を出してくれたおかげで、私はオバチャンから解放された。変な冗談はやめてよ、と睨んだら江藤はクスッと笑ってる。
何だかムカつくなぁ……
「そう言われたら、そんな気もするわね……」
「たまたま、そういう時期なんじゃないの? 重なっただけ?」
少し弱気になってるオバチャンを見てたら、ふと気がついた。課長や代わってきた人たちが乗っ取りに関わっているなら、前の職場ってどこなんだろう。
「課長も最近代わってきた人ですよね? 歓迎会で前に居た会社の話をしてたけど、本当なのかなぁ? 代わってきた人たち、みんなどこから来たのか気になりません?」
私が問うと、オバチャンの表情が明るさを取り戻した。そういうことは、オバチャンの得意分野らしい。
「課長はT重工の関連会社の設計部って言ってたわよね? 調達部長も同じだったはずよね?」
「ええ、そう。同じ設計部の上司と部下だって言ってたわよ。部長はラインオフしたらしいって」
山本さんの言葉に呼応して、野口さんがさりげなく毒を吐いた。
T重工の関連会社で部長や役職にでも就いていたなら、T重工と取引のある会社でも名前ぐらいは知っている人がいても当然だ。しかし役職に就かずラインオフしていたなら、知名度も高くない。よほど付き合いがない限り、知らなくても無理はない。
「本当に関連会社に居たのか、調べてみませんか? 部長と課長だけでなく、ここ一年ほどの間に代わってきたエライさんたちの素性を」
堂々とした態度で呼びかける江藤に圧倒されたのか、オバチャンは黙って頷いた。もはや美香の事を口にする余裕もなく。