君の知らない空


「ごめん、汚してしまったから洗った……」

「今日は天気がいいから、すぐに乾くだろ。ほら、食べなよ」


彼の答えを畳み掛けるように周さんが言って、テーブルにトレイを置いた。トレイの上には白いご飯、具沢山の味噌汁、卵焼きに焼いた鮭。


かなり驚いた。
こんな朝食らしい朝食が出てくるなんて思いもしなかったし。誰が作ったんだろう?


「あ、はい、いただきます」


まず、具沢山の味噌汁を一口。


「どう? 美味いだろ?」


じっと見てた周さんが、間髪いれずに問いかける。周さんが作ったんだ。


「はい、美味しいです」


と答えたら、周さんは嬉しそうに大きく頷いた。


「だろ? 美味くないはずないんだよ、なあ、亮?」


彼は苦笑いしながら、首を傾げてる。何か言いたげに唇を噛んで。


「亮は、俺の作った味噌汁を美味くないって言うんだ。具が多すぎるって、多い方が美味いのになぁ? おかしいだろ?」


周さんが私の横に屈み込んだ。顔を覗き込んみ、まくし立てるように問いかける。彼の勢いに圧倒されて、私はただ頷くだけ。


「だって、味噌汁なんだから汁がメインだろ? 具が多すぎて汁が飲めないんだよ」


くすっと彼が笑った。


「文句ばっかり言うな、もう作らないぞ」


周さんも負けてない。


本当にこの二人は、美香の兄を狙ってる刺客か何かなんだろうか。こうして見てたら、普通の人と何ら変わらないのに。


二人の様子を微笑ましく思いながら、卵焼きを一口食べた。
美味しいじゃない。
これを周さんが作ったの?
母に負けてないかも。




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