君の知らない空
   

店を出たら、下校する高校生の姿がちらほらと見えた。さっき店に飛び込んできた高校生と同じ制服、実は私の母校でもある。


「アキさんが橙子のお母さんのふりして、会社に休む電話してくれたんだ。ぴったりだろ?」


と言いながら、彼の足は夕霧駅へと向かっている。私は彼の後をついて行く。


「ありがとうございます、アキさんって、年はいくつなんですか? ハルミちゃんが姪っ子なら、ちょうど私のお母さんと同じくらいの年なのかな?」

「あれ? アキさんって、いくつだったかなあ? たぶん同じくらいだよ、僕も橙子と同じ年だし」


さりげなく彼が年齢を暴露した。
同じ年だったんだ……落ち着いて見えるから、もう少し上だと思ってたのに驚いた。


「同じ年だから、丁寧に話さないでいいよ。タメ口で話してよ、僕もそうするから」


そう言ってくれるとすっきりする。彼と話す時、丁寧語で話すべきかタメ口で話してもいいものか悩んで、変な話し方になっていたから。


「タメ口って言葉、知ってるんだね、小川さんは何月生まれ?」

「だから、小川さんって呼ばないでもいいよ、亮(りょう)でいいから、僕は5月生まれ、橙子と一緒だよ」


くすっと彼が笑う。
そんなこと言われても、亮なんて恥ずかしくて呼べないよ……


顔が火照ってくるのがわかる。たぶん赤くなってるはずだと思うと、余計に恥ずかしくて少し顔を伏せた。


「橙子? 同じ5月生まれが恥ずかしいの? 僕は5月17日、橙子の一週間後だ」

「ううん、違うよ、本当に嬉しいの、そんなに近いなんて、すごい偶然かも」


っていうか、私から話さなくても何でも知ってるんだね。私の事を依頼されただけなのに、そこまで調べるの?


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