君の知らない空


違う。


私の机のある塊の二筋向こう側の列の中、斜め右辺りに見たことない後ろ姿が混じっている。


フロアにずらり並んだ机の列は、向かい合わせに10人ずつの塊になって並んでいる。塊ごとにチームが異なっていて、一番端には向かい合う机の列を見渡せる席にはチーム長が座っている。


あそこは私と同じ『調達課』だけど、チームが違う。私は『素材チーム』、あそこは『計器チーム』だ。


『計器チーム』のチーム長のすぐ目の前は、確か先週末までは空席だったはず。


そこに、艶やかな栗色の長い髪を湛えた後ろ姿がある。華奢な肩から背中の真ん中辺りまで伸びる巻き髪は弾むように柔らかで、一目で若い女性だと分かった。



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