君の知らない空
誰も居ない部屋、私はソファに投げ出された。男性らは部屋を出て、先輩と二人きり。
桂一の姿は見当たらない。
「大月は来ないよ、一緒にヤツの帰りを待とうか」
見透かすような言葉を吐いて、先輩が覆い被さってきた。必死に跳ね除けようとする首筋に、先輩が歯を立てる。
「いやっ!」
痛みに跳ねる体を押さえ込まれて、先輩の唇が這わされてく。襲い掛かる苦痛と恐怖に、体が震え出す。
私は唇を噤んだ。
もしかすると、亮が助けてくれるかもしれない。でも外には、先輩や綾瀬の仲間が待ち構えているだろう。
だとしたら、呼んではいけない。
「本当に俺が覚えてないと思った? 俺さ、酒には強いから記憶が飛んだ事なんてないんだ」
ゆるりと頭を上げて、先輩が冷ややかに笑う。
一昨日の事を覚えている。驚くべき事実に、更なる恐怖が溢れ出す。
「どうして、嘘を……」
「俺の気遣いだよ、大月に知られたくないだろ? 他の男といたなんて言える? それに俺は、ココを教えてもらいたかったからね」
徐に立ち上がり、先輩は部屋を見回した。得意げな顔をして。
「本当に、ここが彼の部屋だと思うの? 私が、彼の所へ行くとは限らないのに」
「間違いない、あの後、君はココに来たんだろ? 大月は君が会社の同僚の家に泊まったと聞いたらしいけど」
あの後って何?
思考は混乱するばかりだけど、確かな恐怖だけが胸を締め付ける。
「違う、私は、会社の友人の……」
「一昨日、高架下で俺の邪魔をしたのはヤツだ、俺は見たんだよ、君とヤツが抱き合ってるのを」
私の反論を畳み掛けるように、先輩が言い放つ。確信に満ちた力強い口調と、突きつけられた事実に言葉が出ない。