君の知らない空
もし、亮だったらどうしよう。先輩だったら、綾瀬に危害を加えるかもしれない。そうしたら美香が……
床に叩きつけられるハサミの音に、びくっと体が跳ねる。
綾瀬が危ない。
「はなせっ!」
切迫した綾瀬の声に、私は布団を跳ね除けた。部屋の壁際に掛かっていた木製のハンガーを握り締め、思いきって部屋を飛び出す。
「綾瀬さん!」
私はハンガーを大きく振り上げた。
部屋を飛び出した私の目に映ったのは、複雑な光景。床に抑え込まれた綾瀬と彼を抑え込んでいる亮が、私を見てる。
「何してる! 早く逃げろ!」
綾瀬は、亮が自分を始末しに来たと完全に勘違いしている。違うのだと教えてあげなくては。綾瀬が向かってきたから、亮は仕方なく抑えたんだと。
「綾瀬さん、彼は私たちを助けに来てくれたんです。信じてください」
「なに? 本当か?」
綾瀬が顔を強張らせる。
黙って頷く私を見つめ、信じられないという顔をしながらも綾瀬は抵抗を止めた。ほっとしたように、亮が手を緩める。
すると綾瀬は身を翻し、亮を壁に押さえつけた。亮が苦痛に顔を歪める。