君の知らない空
「いい子ですよ、
挨拶もちゃんとしてくれるし……
あ、車通勤って言ってました」
当たり障りない答え。
でも、それぐらいしか知らないから答えようがない。
「そんなの知ってるわよ、
今日の宴会どうするのかしら?
車乗ってきてないの? 誰かの迎え?」
山本さんは首を傾げた。
今日は定時後に宴会がある。
美香の歓迎会だ。
場所は職場の最寄りの月見ヶ丘駅前の中華料理店、課の宴会は大抵そこで行う。
「私は何も聞いてませんけど、
飲まないんじゃないですか?
駅前だからバスかもしれませんよ?」
「ふぅん、そうかもね。
きっと若い男の子が狙ってるはずよ」
口を尖らせる山本さんは、
いつも以上に怖い顔をしていた。