千の夜をあなたと【完】



4月中旬。

――――あの事件から半月後。


ウェールズ東部のヒースの原野を騎馬隊が駆けていく。

その中にイーヴの姿があった。


向かう先は、グロスターだ。


あれからリカードの葬儀とレティの葬儀が執り行われた。

リュシアンは相変わらず行方不明だ。

そしてエスターは当面の間、セレナの後見人としてティンズベリーに留まることになった。


イーヴはあれからブラックストンの騎馬兵を使ってあの男の行方を追ったが、結局行方はわからなかった。

ティンズベリーに居ても、これ以上の情報は掴めそうにない。

グロスターに戻り、ブラックストンの情報網を自ら駆使した方が効率良く情報を得られるだろう。

イーヴはそう結論づけ、グロスターに戻ることを決めた。


イーヴは馬を駆りながら腰に差した剣の柄を握りしめた。

『報復するもの』。

今の自分にこれほど似合う剣は他にはないだろう。



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