千の夜をあなたと【完】



そして翌日。

教会で『黒い聖母』を見た後、レティは市場へと向かった。

ライナスはこの後、『諸島の王』オーラフに呼び出されているらしく教会の前で別れた。

市場で食料品を買った後、雑貨を売っている店へと向かう。

レティは紙とペンを購入し、店を出ようとした。

……その時。


「……ブラックストンの若様が、結婚したらしいね」


ふいに耳に入ってきた言葉にレティは耳を疑った。

思わず足を止め、目を見開く。


見ると、井戸の脇で恰幅のいいおかみさん達が野菜を洗いながら世間話をしている。

レティは思わずそのうちの一人の腕を掴んだ。


「あの、すみませんっ。その話、詳しく聞かせてもらえませんか?」

「なんだい、あんた。……まぁ、いいけどさ」


女達は驚いたようにレティを眺めた後、物凄い勢いでしゃべり始めた。

レティはその話を氷のように固まったまま聞いていた……。


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