千の夜をあなたと【完】



ひゅんと横から何かが飛び、それはイーヴの手をかすめ、壁に突き刺さった。

……短剣だ。

驚き、はっと横を向いた二人の目に映ったのは……。


亜麻色の髪を持つ、蒼い瞳の青年――――ライナスだった。


「久しいな。ブラックストンの息子か」


ライナスは言い、素早く二人の間に身を割り込ませた。

目を見開いたイーヴに、ライナスは壁の短剣を引き抜き、冷ややかな声で言った。


「まさか貴様がここにいるとはな。今回の会食、貴様が仕組んだことか?」

「……」

「何の目的かは知らないが。おれの女に手を出さないでもらおう」


ライナスは言い、レティの肩を横から抱き寄せた。

おれのものだ、と示すように。



< 304 / 514 >

この作品をシェア

pagetop