千の夜をあなたと【完】



レティはなすすべもなくライナスの腕の中で体を硬直させていた。

二人の様子を見たイーヴの顔がしだいに青ざめていく。

――――血の気が引いて白くなった、その顔。

ライナスはその蒼い瞳でイーヴを見据えながら、口を開いた。


「昔はどうあれ、今、レティはおれの女だ」

「……」

「貴様も結婚し子ができたと聞く。であれば、もうレティに用はないだろう?」


ライナスは淡々とした声で言い、レティの肩をさらに強く抱き寄せた。

そのまま踵を返し、会食の間へと戻っていく。

レティはなすすべもなく、ライナスに連れられるがまま会食の間へと戻った。


――――そして、そんな二人を。

イーヴは昏い怒りに満ちた目で、じっと射殺すように見つめていた……。


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