千の夜をあなたと【完】



便箋を持つ手が震えだす。

イーヴは便箋をじっと食い入るように見つめた。

その視界がゆっくりと滲んでいく。


レティの心……。

ずっと欲しかった、言葉。


「レティ……」


便箋の下の方に書かれた、一言だけの言葉。

その一言がイーヴの胸に溜まった澱を全て洗い流していく。

過去の憎しみも、怒りも、悲しみも……。

全てが浄化され、イーヴの心に深い愛情が広がっていく。


たとえレティと離れていても、もう自分は揺らぐことはないだろう。


レティの心があれば、何もいらない……。

レティの心さえ自分のものなら、自分は強くなれる。


レティとの将来を確実なものにするためなら、自分はどんなことでもできる。

まずはリュシアンに連絡を取らなければならない。

イーヴは便箋を封筒に戻し、胸元にしまった。



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