キウイの朝オレンジの夜


 車に揺られる。あたしは呆然としたまま頭の中をエンドレスに流れる屋上の車の中での出来事に翻弄されていた。

 お陰で、クロージングはめちゃくちゃだった。

 妄想に邪魔をされて言葉がうまく繋がらず、客を混乱させてしまった。挙句の果てには客に心配までされてしまったのだ。

「神野さん、今日はどうかしたの?」

 あたしは40代の男性社員の前で、頭を垂れる。

「鈴木さん、申し訳ありません・・・。今日の説明、まったくなってませんね」

 出直してきます、とアポを取り直して、謝った。客の男性は苦笑して、神野さんでもそんな放心状態あるんだねえ、と言っていた。

 反省せねば。個人的混乱状態を仕事に持ち込んでしまった。


 だけど、これ以上のヤツのお仕置きは恐ろしいので、あたしは態度だけは普通に戻した。

 惚れてなければ若干嬉しいあのセクハラお仕置きは、惚れててそれを言えない人間には地獄以外の何者でもない。

 対話もするようになった。心の中でお経を唱えて目もちゃんとあわせるようにした。副支部長や皆は玉ちゃんと支部長の強張りが消えた~と喜んでいたけど、大久保さんだけは、可哀想に、とため息をついていた。

 そんなこんなで無事ではないが、満身創痍にもならずに2月戦は終了。


 我が支部からは旅行入賞が2名で、記念月を終えた。





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