キウイの朝オレンジの夜


 付き合いだした頃、光も嫌がったものだ。

 ――――――俺、保険とか必要ないから。彼女の仕事だからって関係ねえよ。人に嫌がられる仕事なんて辞めてしまえよ。

 そう言われたこともある。

 何でそんな頑張るの?人の命をお金にするのがそんなに楽しいのか?そう言われて大喧嘩したこともある。

 自分の為に保険に入るんじゃないのよ、自分を大切に思ってくれている人たちのために入るのよ!!って平手打ちしたこともあった。


 その光が・・・・。

 あたしはつい涙ぐんだ。

 やだ・・・今日は泣けないメイクだって言ってるのに、あの男・・・。

 唇をかみ締めて涙を耐える。だけど顔はほとんど笑顔だった。

 あまり・・・頑張りすぎるな。貰った声が耳の中でこだまする。あたしは一人で頷いた。

 はい、肝に銘じます!


 そして、戦場へ歩き出した。保険の営業、神野玉緒、本日のお仕事開始。



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