キウイの朝オレンジの夜


 支部に備えられた小さな給湯室で、マグカップを持ったままあたしは困って唸った。

 と、とりあえず・・・と自分で掛け声をかけて、ポットの電源を入れる。何にせよ、お湯はいるんだし。先輩方が出勤してきたらコーヒーは飲むはずだ。

 カップにコーヒーの粉を入れてこれから他の面々が出勤するまでどうしたらいいのだ、と悩んでいたら、悩みの原因が自らやって来た。

「俺にも淹れて」

「うひゃあ!」

 驚いて横に飛ぶあたしを見て笑うでもなく、稲葉さんは淡々と自分のカップを出してくる。

 び・・・びっくりしたあああ~!!ドキドキとうるさい鼓動を抑えようと頑張っていると、神野さ、とヤツの声が聞こえた。

「は、はいっ!?」

 慌てて振り返るとすぐ隣に稲葉支部長がいてまた仰け反る。何でこんなに近いのよ~!!

 あたしをじっと見たままヤツが言った。

「・・・今日、どこから来た?」

「は?」

 あたしは首を傾げる。

 給湯室の入口に肩を預けてもたれ、今日も一寸の乱れもない美形の上司は、冷たい真顔であたしに言った。

「服が昨日と同じ。それに、会社の前を朝から‘元彼’と仲良く歩くのは、どうかと思うけどな」

 あたしは固まった。

 ・・・・みーてーたーのーかあああああ~!!!

 
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