ヘタレ少年と恋模様
風太さんは教室を出ると、一気に駆け出した。
え、なんで?
走る必要性がわからい。
鬼ごっこでもするの?
訳がわからないが、とりあえず追う。
昼休みだということもあって、廊下には人がいっぱいいる。
風太さんと俺は注目の的だ。
すれ違う人々に二度見され、先生には注意され、やっと風太さんが立ち止まったと思えば、近くの空き教室に入っていった。
走るの速い…。
追い付くと、俺も教室の中に入った。
風太さんは窓際の壁にもたれ掛かっていた。
「山村くんさぁ」
「……は、はい」
「俺ら、君に土下座したよね?」
やっぱりこのことか。プライドが許せなかったんだろう。
空き教室に来たということはボコられるのは確定か…。
なんでのこのこと着いてきちゃったんだろうな、俺。
でも、希望は捨てちゃいけない。
「その節は、どうもすみませんでした!」
潔く頭を下げる。
どうかボコるのだけは勘弁してくれ!
「……なんで謝ってんの?」
は?
頭を上げると不思議そうな顔をした風太さんがいた。
「まさか人気のない教室で殴られると思った?」
ニヤニヤしながら言われる。
その顔が何故か腹立たしい。
でも殴られるんじゃねぇの?
「山村くんよぉ、人の話は最後まで聞くもんだぜ?」
「…は、はい。すみません」