ヘタレ少年と恋模様
最近謝り癖がついてるな、そう頭の片隅で感じながら風太さんの次の言葉を待った。
「で、さっきの続きだけどさ。土下座したあと茜さんがお前を仲間にしてやるって言ったろ?」
「……はい」
やっぱり本当だったのか、それは。
というか俺に拒否権はないのか。
まあ、あっても断れないけどな。
「つーことはだ。お前は一番下なわけだ。つまり後輩。後輩がまず先輩にしなきゃいけないことはなんだと思う?」
「……えーと、挨拶?…ですか?」
「ちっげーよ!もてなしだよ、もてなし!」
いや、それは先輩が後輩に最初してくれることじゃないんすか。
つい言ってしまいそうになった言葉を飲み込む。
「というわけで後輩。茜さんをもてなしてくれ!」
………。
えっと。
あの恐い少女をもてなせと?
俺が無言なのを不満と取ったであろう風太さんは何故か言い訳を始めた。
「ほら、あれだよ。茜さんが俺らの中で一番偉いからさ、まずはその人から機嫌取るのが礼儀ってもんだろ?」
そんな礼儀聞いたことない。
不良の世界では当たり前なのか?
そう思っても素直には言えない。だって怖いし。
俺が口を開けないのをまた何か勘違いしたのだろう。
風太さんは髪をかきあげると、
「あーわかったよ!その目はなんか企んでるって言いたいんだろ?そうだよ、企んでるよ!茜さん怒らしちまったから、俺の代わりに機嫌とってくれよ」
なんの催促もしていないのに暴露してくる風太さん。
「無理です」
これは素直に言えた。
それは瞬時に、あの少女と二人きりにはなりたくないと脳が勝手に判断したからだ。
「あのさ、山村くん?あんた一年、俺二年。年齢的にも俺先輩なんだわ」
「……はあ」
「先輩の言うことは…?」
「…ちゃんと聞きましょう?」
「ばっか、ちげーよ!絶対だろ絶対。先輩の言うことは絶対!」
それってただ言わせたいだけなんじゃ。
「ということで放課後ヨロシク」
そう言うと素早いスピードで教室を去っていった。
……まじかよ。
あの少女と会話すらしたくないのに。
しかも機嫌が悪いらしいし。
俺は頭を抱えた。