ペーパースカイ【完結】
〈11〉輪子:ロング・ラブストーリー
日曜日の早朝。

家に辿り着いたと同時に、私は一目散にシャワーを浴びた。

洗っても洗っても気が済まなくて。

ごしごしごしごし、痛いくらいに、スポンジで体を擦った。

その間中ずっと、フラッシュバックみたく思い出していた。

昨夜の事とか、今朝の事とか、色々色々。

陽司の事は一度も、思い出さなかった。

きっと最後の生クリームは、昨夜と今朝のうちに男の子が

犬みたくなめ回して、空っぽにしてしまったんだろう。

だから私は帰り道の電車のホームで、陽司にあんなメールを入れたんだ。

『私、もう陽司と別れたい』

髪と体を三回ずつ洗って、部屋に戻ったら携帯が光ってた。

『今日バイト遅番だから、その前に会って話したい。

何時ごろ会える?』

いつからだろう。

陽司からのこんなメールに、浮き足立つ事がなくなったのは。

うれしくてたまらなくて、保存したメールもたくさんあるのに。

恋って、保存ができないんだね。

今日の私は陽司に会って、タワーケーキをめちゃくちゃに壊すためだけに、

生きてるんだね。

『今すぐでも、何時でもいいよ』

『じゃあ今から迎えに行くよ』

素早い返信。

陽司、昨日も遅番だったのに。
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