金色の師弟
ディンは右手を地に付き、素早く体勢を立て直すと首を回しアデルの姿を探す。
ふわりとなびく黒髪を視界の端に捉え、ディンは確認するより早く距離を詰めるために駆け出す。
アデルもそれを阻止すべく、ディンの足元へと矢を放つ。
一本、二本、三本と続いて足元に刺さった矢に怯む事なくディンは跳んだ。
そのまま両手を振り上げ、アデルへと振り下ろす。
「覚悟っ!!」
アデルが矢を引き絞るよりも、ディンの剣の方が速い。
アデルは二本の矢を手にしたまま、ディンを見上げる。
そして、自身目がけて振り下ろされる瞬間に口元が不敵に緩んだ。
アデルは真っ直ぐに跳躍したディンの下へ飛び込み、転がり込んだ。
矢を持つ片手を付いて曲芸師のような身軽さで体勢を整えたアデルは、すかさず矢をつがえ弦を引く。
ディンの振り下ろした剣が大地を抉り、土が跳ねた。
それを合図に、アデルは矢を放つ。
一本目は振り下ろされた腕へ、二本目は足へ。
当たる……!
誰もが息を呑んだ修練場の中、首だけで振り返ったディンは、剣を振り回すような動きで二本の矢を叩き落とした。