金色の師弟
アデルは素早く右手を振り下ろす。
彼は指の間に投てき用のナイフを挟み、ディンへと投げたのだ。
弓以外にも隠し持った武器を忍ばせているのが、この男のいやらしい点であった。
「ちっ」
盛大に舌を慣らし、ディンは顔へと一直線に向かってくるナイフを剣で弾く。
だが、アデルには十分な時間稼ぎとなった。
眼前に迫る攻撃を防ぐため、ディンは意識をアデルから外してしまったのだ。
アデルの指にはすでに一本の矢。
弦をぎりぎりまで引き絞った右手を震わせ、アデルの右目はディンの足を捉える。
右手が弦を離す。
反動で放たれた矢はナイフよりも真っ直ぐにディンへ迫った。
ナイフを弾き高めに構えられていた剣では防ぎきれない。
悟ったディンは地を蹴り後退する。
先程までディンの立っていた場所に矢が刺さった。
だが、アデルの攻撃はまだ終わらない。
初撃と間髪入れずに二射目を放つと、アデルは三本目の矢を手にその場からディンの周囲を回るように走りだした。
腕を狙い飛んできた二射目を、ディンは全身のバネを駆使し体を捻らせ回避する。
すでに二人の間には距離が開き、弓兵のリーチとなっていた。