環七あやめの遊戯
恐らく、人にとって思い出に浸るという行為は、良くも悪くも、人間の持つ根本的な欲求を満たしてくれる事だろう。
しかも、依存性がある。

きっと、面白い映画は、何度見ても面白いのと同じ理屈だろう。

だが、この環七あやめと言う少年が、この風変わりな遊戯にハマった最大の理由は、前にも話した既製品、つまり『与えられた』物ではなく、自分自身で『創造』した物だった為である。

もうラーメン屋を探している所では無かった。あやめは、適当にその辺りで見つけたうどん屋で昼を済ますと、その日は一日中、その遊戯に没頭し続けていた。


…それ以来ずっと、あやめはその遊戯に、暇さえあれば家でも外でもハマりっぱなしであった。

他人からすれば、常にボーッとしているだけにしかあやめは見えないので、学校の授業では先生に、注意力散漫だとしかられる事が多くなったし、友達からも、話のキャッチボールの出来ない奴とされ、次第に変人扱いされる様になっていった。

ただ、当の本人は至って幸せな毎日を送っていたので、周りの視線など気にもしていなかった。
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