Together~キミと一緒に~
『先輩のことがずっと好きでした!』
どうやらその女子は俺らと同じ1年らしかった。
1年にもモテるなんて、相当だと思った。
その女子も意外に可愛いし、きっと受けるんだろうと思ってた。
でも、神野先輩はひどい言葉を吐いてその場から去った。
『俺、野球以外いらない。』
そんな言葉を聞いたことがなかった。
まるで、女子をもののように言い放った神野先輩。
俺はその場から動けなかった。
振られた女子も大泣き。
俺は絶句。
まさか、あの神野先輩があんなことを言うなんて思わなかった。
断るにも、言い方があるだろう。
あの人は、本当に野球が好きなんだ。
いや、好きすぎる―――
俺も相当野球バカだとは思ってた。
でも、それ以上に神野先輩は野球のことを好きすぎたんだ。
野球好きに悪いやつはいないって思ってた俺は、相当ショックを受けた。
好きすぎても、傷をつけることがあると知ってしまった。
それから、俺は神野先輩が怖くなった。
俺もいつか「お前、マネジやめたら?」って言われそうで。
マネジって意外と大変だっていうことを知って、俺は半分自棄になっていた。
でも、このままだと神野先輩に何か言われるかもしれないって思った俺は一生懸命にマネジの仕事を務めた。
「裕樹!」
神野先輩が俺の名前を呼ぶときはいつもひやひやしてた。
でも神野先輩は俺のことをすごく大事にしてくれた。
あの時、俺が見た神野仁は部活にはいなかった。
だから俺は、あの記憶をなくした。
無理やり、忘れたんだ。
そしたら、俺の心はすごく軽くなった。