Together~キミと一緒に~

「茜里、私怒ってないから。茜里の仕事なんだから、怒る理由なんてないでしょ?」

「でも、弥生は本当はベンチに行きたいんでしょ・・・。」

この時初めて佐藤先輩が弥生、と言ったのを聞いた。


それに驚いたのは私だけじゃなかったみたいだけど。


「・・・行きたくないよ。だからいいの。」

「弥生はいつもそうやって我慢する!」


「してない。甲子園に行けないわけじゃないんだから。嬉しいよ?我慢してないよ?」


「・・・ほんとに?」

「うん。本当に。茜里、いってきな。」


少しだけ微笑んで言う岡本先輩がとても大人っぽく見えた。


そして、佐藤先輩はそんな岡本先輩を見て「うん」とつぶやいた。



あれから1週間。


ついにこの日が来た。

あの日からみんなは更に一生懸命練習に取り組んだ。

仁は裕樹とキャッチボールをしてるところをよく見かけた。


その後は、バッテリーでの練習。


時々尾崎先輩がアドバイスをしに行ってるところも見かけた。


バッティング練習では各自で苦手なところ得意なところを確認し、お互いに情報を交換していた。

この1週間でみんなはまた成長した。



この甲子園球場で、どんな試合が見れるのか。

私と岡本先輩はスタンドから応援団たちと一緒に見守っていた。


まだ試合は始まっていない。


相手チームもうちのチームもキャッチボールを始めた。


今日の対戦相手のチームは、おととしの優勝校。

これは、かなり厳しい試合になりそう。


今からドキドキが止まらない私を見て「大丈夫?」と声をかけてくれる岡本先輩。


「まだ試合は始まってないのに、心臓が飛び出そうです・・・。」


「そうね。私も甲子園に来たのは初めてだし、相手チームが優勝経験があるって思うと緊張する。」


< 201 / 258 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop