雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「素直にいう事を聞くおまえなんて、薄気味悪いぞ」 (1)


 王宮の正門にたどり着いたロイドは、識別カードをかざしながら衛視に尋ねた。

 セギュール侯爵の馬車は確かに王宮にやってきたが、正門からは出て行っていないという。

 衛視の他に、数名の警備隊員も正門にいた。
 ローザンがラクロット氏に連絡したのだろう。

 だが王宮の出入口は、正門の他に三ヶ所ある。
 馬車に乗って出て行ったどうかも分からない。

 王宮の敷地は果てしなく広い。
 騒ぎになる前に出て行ったら分からないし、騒ぎが収まるまでどこかに潜んでいる可能性もある。

 ロイドは門が開くと、自転車に乗ったまま、建物に向かって走り出した。

 走り出した途端、ポケットの中の通信機が鳴った。この音はユイだ。

 ロイドは自転車を急停止させ、通信機の応答ボタンを押す。


「ユイ! どこにいる?」

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