雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

 返事はない。
 話が出来る状況ではないということか。

 焦る気持ちのまま、ロイドは再び自転車をこぎ始めた。

 うっかりユイの名を呼んだ事を聞かれなかっただろうか、と少し気になったが、それどころではない。

 本当はユイの居場所が確定するまで、王宮の出入口をすべて閉鎖してしまいたい。

 だがロイドには、衛視や警備隊に命令する権限はない。
 元より、たとえ王室でも、確たる証拠もなく、名のある貴族の馬車の中を改めたり、足止めしたりする事は困難なのだ。

 こんな時には、犯罪を未然に防ぐ事より、体裁を守る事に重きを置く、上流社会に辟易する。

 ユイの通信機の発信信号を読み取るブログラムは、メインコンピュータの中にある。

 まさか渡したその日に信号を読み取る必要が発生するとは思わなかったので、ローザンのパスワードではアクセスできないエリアに保存されていた。

 いくら緊急時とはいえ、ロイドのパスワードをローザンに教えるわけにはいかない。
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