雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「愛してる、愛してる、愛してる……」(1)

 いつの間にか日は沈み、研究室の中はすっかり暗くなっていた。

 ロイドはユイの腕に頭を抱かれ、黙って髪を撫でられていた。
 ユイの温もりが心を落ち着かせ、細い指先が優しく頭を撫でる度に、次第に苛立ちが静まってくる。

 気持ちが落ち着いてくると、頬に押しつけられた、ささやかな胸の感触が気になって、別の意味で落ち着かなくなってきた。


「おまえ、ホント胸小さいな」
「……え……」


 思わずつぶやくと、ユイは慌てて手を離し一歩下がった。

 ロイドはメガネをかけて、ユイを見上げながら更に言う。


「最初、ゴツッて、肋が当たったぞ。女の胸に抱かれてるような気がしない」


 ユイはムッとした表情で眉を寄せると、ロイドの頭を小突いた。


< 194 / 374 >

この作品をシェア

pagetop