雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 広域人物捜索装置の高速化は、全世界の検索にかかる時間が、一秒を切るまでになっていた。

 終了サインは出るようになったが、殿下は見つからない。

 ロイドは検索条件を変更しながら、地道に検索を繰り返していた。

 最初は焦りと不安に支配されていた心が、ユイの決意を聞いて以来、妙に穏やかに落ち着いてきている。

 諦めたわけでも、投げ出してしまったわけでもないが、時間が削られていく度に、肝が据わってくる。

 毎夜ユイを抱きしめて口づけるごとに、想いは強固なものとなり、ユイが信じてくれるなら、何の根拠もなくても、自分自身を信じられるような気がした。

 少しの間、ユイを抱きしめたまま、他愛のない話をすると、互いに自室に戻る。

 ユイの温もりが心を落ち着かせ、ロイドは酒を飲まずに眠る事が出来るようになっていた。

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