*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
ひなげしの花言葉
ただプールやフィットネスを使用されるものそう頻繁でない。
しかも使用されるとき彼女はいつも何かに悩んだように表情を歪めて額に手を置いている。
悩み事だろうか。
何に悩んでいるのか話しを聞きたかった。
私はカウンセラーや心理学者ではないから的確なアドバイスを出来るわけでもないが。
それでも話せば少しだけすっきりすると言うものだ。
かく言う私も―――
―――
つい先週のことだった。
後輩であるイシカワ君に誘われて居酒屋に行った。
「やってらんねぇよ!」
私はビールのジョッキをテーブルに叩き付けた。
「毎日毎飽きもせずどうでもいいことばかり頼みやがって!!俺は召使じゃねぇっつの!!」
と住人の一人(名前は伏せておくが)の愚痴を爆発させていた。
私としたことが、第二条(コンシェルジュはお客様のどのような事情を知っても、決してそれを他言してはならない)と言う項目を少しだけ破ってしまった。
「まぁまぁウチヤマさん。所詮俺らなんてそんなもんですよ。何せ彼らにとって俺たちは便利屋だしぃ」
とイシカワ君がが宥めてくれるが、顔は笑っている。
「ウチヤマさんて普段俺らにはすっげぇクールなのに、飲んだら人変るもんなぁ♪おもしろい♪ウチヤマさん、元ヤンだったっしょ?」
突然にそう聞かれて、私の視線は泳いだ。
「な、何を言う。私は“宜しく”だって、“相思相愛”だってちゃんと書けるぞ」
「夜露死苦、走死走愛……やっぱ元ヤンじゃん。しかも激しいっすね」
「…………」
しまった。
そう、私は酒が弱い。
ジョッキ一杯でもしっかり酔っぱらうことができる。
安上がりでしょう?
イシカワ君は私のまさに豹変と言う態度を見たいがために誘ってくれるのである。
趣味が悪いと言いたいが、彼もそんな私を見てストレス発散しているのだろう。
お互いさまだ。
と、言うわけで私はイシカワ君に愚痴をこぼして大抵ストレス発散できるのだ。