【短編】あの日見た夢は、今。
「何かアイツ、余計なこと言ってなかった?」
お母さんは、優しく微笑みながらそう言う。あたしはそんな彼女に、初めて言われた言葉を言ってみた。すると本当に、
「ほんとに? アイツ相変わらず変態なんだから」
分かっているように、そう言った。
“その子に言われたまんまの言葉返してきたから”
言われた時、面白いと思ったと同時に、少し気味が悪かった。こんなセリフを返す馬鹿な女の子がどこかにいたんだろうと。
それが自分のお母さんだとしたら――何故か自然に、納得できる。
“親子”なのだから。
あたしは「……それとね」と、付け加える。
そして、彼が消える間際に言った、その一言を言ってみせた。
――……
――……
“最後にもう一つだけ……言っといて欲しいんだよな”
「なによ」
そう返したあたしに、彼が残した言葉――。