【完】プリンセス

「あれ? ひーくんと、心菜ちゃん?」


突然呼ばれた名前。


……ひーくん?!


「あ……奈津美さん?」


私が、その名前を口にするより先に叫んだ陽呂。


「わー♪ ひーくん、かっこよくなったねー」

「え? 本当ですか? ありがとうございます」


デレデレしながら笑う陽呂を横目で睨んだ。

そしてやっと隣に居る私にも目を向けた奈津美さん。


「あれ? でも何で2人……」

「あ……婚約したんですよー俺達」

「へーそうなんだ」


奈津美さんが、私をチラッと見た。


「良かったわね、心菜ちゃん、想いが報われて」





コレ、完璧嫌味よね?



奈津美さんは、うちのパパの取引先の娘さん。
小さい頃は、子供同士よく遊んだんだけど……。


陽呂が私ばっか優先するのが気に入らないらしく、いつも邪魔ばっかする人だった。



そして私が陽呂を好きだって気付いてからは……もっと。



好きだからとかじゃなく、陽呂は仕方なく私を優先してただけなのに。
親からの言付で。


なのに、自分が1番じゃないと気に入らない典型的なお嬢様だった奈津美さんには、通用しなかったみたい。



まぁ、簡単に言えば……その頃から嫌い。






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