【完】プリンセス


『かおり』


振り返った目には、今にも零れそうな涙。


『誰、あんた?』

『お兄ちゃん!』

『おにぃ……うわっ!』


多田の胸座を掴んだ。


『俺の大事な妹に手ぇ出すな。
わかったな?』



何故か……それだけで、逃げた多田。

おいおい。
いいのかよ、多田?


『沙耶が……沙耶が』


腕を痛い位に掴み、必死に訴える。


『ん、分かってる。かおりは、家戻っとけな?』

『うん……』


ちょっと心配だったけど、かおりが曲がった方は、人通りも多く、大丈夫だろうと判断。



問題は……沙耶ちゃんだな。

真っ直ぐ前を向き、走り出した。

< 270 / 392 >

この作品をシェア

pagetop