【完】プリンセス
『かおり』
振り返った目には、今にも零れそうな涙。
『誰、あんた?』
『お兄ちゃん!』
『おにぃ……うわっ!』
多田の胸座を掴んだ。
『俺の大事な妹に手ぇ出すな。
わかったな?』
何故か……それだけで、逃げた多田。
おいおい。
いいのかよ、多田?
『沙耶が……沙耶が』
腕を痛い位に掴み、必死に訴える。
『ん、分かってる。かおりは、家戻っとけな?』
『うん……』
ちょっと心配だったけど、かおりが曲がった方は、人通りも多く、大丈夫だろうと判断。
問題は……沙耶ちゃんだな。
真っ直ぐ前を向き、走り出した。