【完】プリンセス
「何してるの? 陽呂」
聞きなれた声。
振り返ると呆れた顔をした心菜が、部屋に一歩入り、腕を組んで見ていた。
俺の腕を叩いてギブする美鶴を、素早く離す。
「プロレスごっこ?」
にっこり笑って言った俺を睨んで、
「美鶴を苛めないでっ!」
へいへい。
大切な大切な美鶴君ですもんねー。
俺の腕から擦り抜けた美鶴は、そそくさと心菜の背中に回った。
その後で笑う美鶴。
このバカ兄弟めっ!
「ところで……姉ちゃん、どうしたの?」
「え? あ……部屋から物音がしたから……」
「ふーん?」
不敵な笑みを零す美鶴に、少し落ち着かない様子で答える心菜。
何だ? この兄弟。
心菜……微妙に顔赤くないか?
「陽呂は、何してんの?」
そんな二人を見つめてた俺と目が合った心菜に聞かれた。
「あ……クーラ壊れてるんで、美鶴の部屋に……」
「明日の誕生日に、婚約発表するから」
って!
俺の話は無視かいっ!
自分から聞いた癖によ……。
じゃあ、聞くなよな?
って!待て……。
「婚約発表???」
「当然でしょ? 婚約したんだから」
そりゃそーだけど……。
何も俺の誕生日に発表しなくても。