Secret Lover's Night 【連載版】
「吉村さん、あの…」
「ちー坊が、千彩が言うてました。キスは大好きな人同士がするもんやって。せやから自分はハルといっぱいするんやて」
「えっと…それは…」


「この期に及んでまだ逃げる気?せっかく俺がいたーい昔話してまで言いやすいように道作ってやったのに!何?どれだけチキンなわけ?」


言い淀む晴人に、とうとうメーシーの堪忍袋の緒が切れた。完全に目が据わってしまったメーシーが、徐に晴人の胸倉を掴んで睨みつける。

「いや、メーシー。ちょっと、ちょっと待って」
「待って?ヤダね。だいたい誰と誰が話するためにここに来たと思ってんの?わかってんの?」
「わかってる。わかってるから」
「わかってねーじゃん。だからさっきから黙りこくってんだろ?言ってやれよ!千彩に惚れてるって。責任取るから一緒に暮らさせてくれって。カッコつけてんじゃねーよ!」

ふんっと鼻を鳴らしたメーシーは、相当におかんむりで。どこを一番にフォローしようか迷う晴人をよそに、今度は恵介が閉ざしていた口を開いた。


「吉村…さん。あの…こいつ、ホンマにええ奴なんですわ。俺、高校からずっと一緒におるんですけど、カッコええし頭ええしでクラスの人気者でね。何させても上手いことしよるし、誰にだって優しいし。今になってもそれは変わらへんし、カメラの腕だってピカイチなんですよ。なんぼも賞獲ってるし、こいつに撮ってもらいたい言うモデルなんかよーさんおって…それで…」


涙ぐみながら必死に熱弁する恵介を見て、とうとう吉村が笑い始めた。それはもう、豪快に声を上げて。


「参った。参りましたわ」


くしゃりと顔を緩ませ、その笑い声でついさっきまであったはずの緊張感を吉村は容易く吹き飛ばす。

あぁ、こうゆうところが千彩にそっくりだ。と、片方に荒れた友人、もう片方に涙ぐむ友人を抱えた晴人は密かに笑みを零した。
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