Secret Lover's Night 【連載版】
「僕の母親がね、そうゆう人だったんです。父を早くに亡くしましてね。僕は母に溺愛と言っても過言ではないほどに愛されて育ちました」
意外な告白に、吉村がじっと耳を傾けている。
「でもね、ある日僕は知ったんです。自分がどれだけ世間を知らないかってことを。そりゃそうですよね。母親の作った鳥かごの中で飼われてた、可愛い可愛い小鳥ちゃんだったんですから」
ふっと自嘲気味に笑うメーシーに、いつもの緩やかな笑みはもう無くて。どこか遠くを見るような目をして、淡々と言葉を続けている。それが何だか痛々しかった。
「初めて恋を知ったのは、高校生になってからでした。相手はホント…毎日毎日男に囲まれて暮らしてる…そんな女だったんですけどね。でも、それでも僕にとっては、今まで見たこともない新しい世界だったんです」
あぁ、マリのことだろう。と、その口ぶりから晴人には容易に予想がついた。今のメーシーからは到底想像もつかないような昔話に、晴人も恵介も、吉村までもが興味深げに耳を傾ける。
「吉村さんからしてみれば、千彩ちゃんは母親を早くに亡くした「可哀相な娘」かもしれませんけどね?本人はどうでしょうかね。果たして本人も自分を「可哀相な娘」だと思ってるんでしょうか」
そこまで言い切り、メーシーはグラスの中の氷をカランと一回しした。その音と、吉村がハッと短く息を呑む音が重なる。
「俺は…あいつが可愛いてしゃあないんです」
「わかってますよ。あの広告一枚を手がかりに、こうして彼女を探し出したくらいですから」
「俺が…俺が言葉も、字も、生活に関するあれこれも…俺が全部教えて、漸くここまで大きいしたんです。それやのに…」
涙ぐむ吉村に釣られて、隣に座る恵介までもがグスリと鼻を啜っている。人一倍情に脆く、人一倍心優しい。そんな友人を、こんな状況下ながら改めて自慢に思う。
「僕の初恋の相手はとんでもない女でしたけど、彼女の相手はそんなことはないと思いますよ?まぁ、以前は…んー…でしたけど、彼も彼女と出会って随分と変わりましたから。ね?王子」
ポンッと背中を叩かれ、不意に渦中に引き戻される。何か言葉を出そうにも、あまりに突然のことに選びきれなくて。
一度落ち着くためにアイスコーヒーを飲み、ふぅっと息を吐いた。
意外な告白に、吉村がじっと耳を傾けている。
「でもね、ある日僕は知ったんです。自分がどれだけ世間を知らないかってことを。そりゃそうですよね。母親の作った鳥かごの中で飼われてた、可愛い可愛い小鳥ちゃんだったんですから」
ふっと自嘲気味に笑うメーシーに、いつもの緩やかな笑みはもう無くて。どこか遠くを見るような目をして、淡々と言葉を続けている。それが何だか痛々しかった。
「初めて恋を知ったのは、高校生になってからでした。相手はホント…毎日毎日男に囲まれて暮らしてる…そんな女だったんですけどね。でも、それでも僕にとっては、今まで見たこともない新しい世界だったんです」
あぁ、マリのことだろう。と、その口ぶりから晴人には容易に予想がついた。今のメーシーからは到底想像もつかないような昔話に、晴人も恵介も、吉村までもが興味深げに耳を傾ける。
「吉村さんからしてみれば、千彩ちゃんは母親を早くに亡くした「可哀相な娘」かもしれませんけどね?本人はどうでしょうかね。果たして本人も自分を「可哀相な娘」だと思ってるんでしょうか」
そこまで言い切り、メーシーはグラスの中の氷をカランと一回しした。その音と、吉村がハッと短く息を呑む音が重なる。
「俺は…あいつが可愛いてしゃあないんです」
「わかってますよ。あの広告一枚を手がかりに、こうして彼女を探し出したくらいですから」
「俺が…俺が言葉も、字も、生活に関するあれこれも…俺が全部教えて、漸くここまで大きいしたんです。それやのに…」
涙ぐむ吉村に釣られて、隣に座る恵介までもがグスリと鼻を啜っている。人一倍情に脆く、人一倍心優しい。そんな友人を、こんな状況下ながら改めて自慢に思う。
「僕の初恋の相手はとんでもない女でしたけど、彼女の相手はそんなことはないと思いますよ?まぁ、以前は…んー…でしたけど、彼も彼女と出会って随分と変わりましたから。ね?王子」
ポンッと背中を叩かれ、不意に渦中に引き戻される。何か言葉を出そうにも、あまりに突然のことに選びきれなくて。
一度落ち着くためにアイスコーヒーを飲み、ふぅっと息を吐いた。