Secret Lover's Night 【連載版】
中学三年生、進路希望の提出時期に悠真から持ちかけられた相談に、智人は渋い顔をして首を横に振った。


「どうしてもにーちゃんと同じ高校がええねん!頼むわ!」


髪型や服装、仕草まで晴人を真似ていた悠真が、晴人が進学した高校を選ぶことはわかっていた。

けれど、晴人と自分達の年の差は三つ。入学したとて、晴人は既に卒業してしまっている。それに、晴人の進路は大学ではなく服飾の専門学校にすると聞いた。だから、もしかしたら…と期待を込めていたのだけれど、単純な悠真はどこまでも晴人と同じ道を歩みたがった。

「俺らが入学する頃には、お兄は専門学校生やぞ」
「それでも!それでもや」
「どんだけ好きやねん。カリスマか、うちのお兄は」
「カリスマやろ!」
「そんなこと…ないわ」

確かに、自慢の兄だった。どこを取っても優秀で、器用に何でもこなす兄。そんな兄に負けまいと、智人も最大限の努力を続けてきた。それはもう、物心ついた頃からずっと。憧れ、尊敬し、自慢し続けてきた兄。

いつ頃からだろうか。それが負担に思えてきたのは。

「俺、にーちゃんのこと好きやねん」
「告白はお兄にしてくれ」
「なぁ、一生のお願いや」

これで何度目になるだろう。コイツの「一生のお願い」とやらは。そう思いながら、押し切られる形で首を縦に振った。そして数ヶ月後、智人はそれを酷く後悔した。
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