Secret Lover's Night 【連載版】
ベッドルームにはマリとメーシーが眠っていた。ソファでは晴人と恵介が眠っている。そして、隣の部屋では智人と悠真。

皆が自分を心配して集まっただろうことは、いくら千彩にでも察することが出来た。


「ごめんね…はる」


そっと晴人の頬を撫で、千彩は申し訳なさそうに眉尻を下げる。すると、しっかりと閉じていたはずの瞼がゆっくりと持ち上がった。

「はるぅ」

安心と、申し訳なさと、その他諸々。色んな思いが入り混じって、名を呼んだ途端涙が溢れた。

「ん…ちぃ…どないした?」

自分を覗き込みながら大粒の涙を零す千彩。いったい何が起こっているのだろうか。覚醒しきらない晴人の脳は、咄嗟の判断を拒絶した。


「おいで。何泣いてんの?」


千彩にはいつでも笑っていてほしい。晴人の思いは、吉村と同じで。優しく頬を撫ぜると、そのまま引き寄せて唇を寄せた。

「大好きやから泣かんといて」

千彩を宥めるには、この言葉が一番効果的。晴人はそれをよく知っていた。

「はる…勝手にお出掛けしてごめんね。ちさのこと許してくれる?」
「いいや。許さん」
「はるぅ…」

何でもするから許してくれ。そう言って縋り付いてくる千彩が可愛くて。

離れた頃よりも随分と長くなった黒髪をゆっくりと撫ぜ、晴人は小さく笑った。

「許してほしい?」
「うん」
「ほな、一個だけ約束してくれる?」
「うん」

そっと体を離して向き合うと、晴人は真っ直ぐに千彩を見た。

何の濁りも無い綺麗な瞳。

いつでも真っ直ぐに自分を見てくれるこの瞳が、晴人は大好きだった。
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