Secret Lover's Night 【連載版】
それから数十分して、カーテンの隙間から差し込む光に促され、重い瞼を持ち上げた晴人。腕の中の千彩は、Tシャツの胸元にしがみ付くように眠っていて。


「よぉ寝るなぁ、ホンマ」


恵介に散々連れ回され、昨日はくたくたになって家へ戻った。三人が三人共、両手いっぱいに荷物を持って。


「あぁ…あの服片付けなあかん」


ボソッと漏らす晴人の腕の中で、うぅんと唸りながら千彩が身動く。スッと長い髪を梳くと、差し込んだ陽の光でそれが煌めいた。

色白の千彩を彩る艶やかな黒を、晴人はとても気に入っている。

「ちぃ、起きよか?」
「…うぅん」
「ほらほら、離して?ご飯作るから」
「ちさも…」
「はいはい、わかったから」

ポンポンと頭を撫でると、ギュッと握られていたTシャツが解放される。その隙にベッドを抜け出すと、ガラス扉を滑らせてリビングへと出た。


「あぁ…これも片付けな…って、こいつもか」


帰って早々に千彩が眠ってしまったものだから、昨日は男二人で結構な時間まで酒を飲んでいた。だからして、リビングのテーブルの上にはその残骸が、ソファには酔い潰れた恵介が転がっている。

それを一瞥してバスルームへ向かうと、目を覚ますために少し低めに温度を設定したシャワーを浴びた。ブルブルと頭を振り、一気に眠気を飛ばす。


「メシ作って、仕事行って…と。あー、ちぃの昼メシどうしよかな。晩メシもか。戻れんわな、今日は」


急遽完全にオフにしてしまった昨日の皺寄せで、夕方まではスタジオ、そこからは事務所に篭りっきりになってしまう。自宅に持って帰れる仕事ならば是非ともそうしたいのだけれど、眠る前にスケジュールを確認した際に、それは限りなく不可能に近いと苦い判断を下したのだ。
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