Secret Lover's Night 【連載版】
カウンターに並べられた食器に、リビングのあれこれ。ものの10分足らずで片付いてしまうのだから、「手慣れたものだ」と自分でも感心してしまう。

「はるー、着替えた」
「おぉ。パジャマは?」
「枕のとこ置いた」
「OK.俺着替えてくるから、ちょっと待っててな?」
「はーい」

ベッドルームから出てきたその姿は、やはり恵介のコーディネートをまるで無視した合わせ方で。昨日散々歩き回って服を大量に購入しただけに、スタイリスト泣かせだ…とため息を吐きそうになる。予想はしていたものの、さすがに恵介を哀れだと思わざるを得なかった。


「あれは…何とかせなあかんな」


着替えを済ませ、ジャラジャラとアクセサリーを着けながら思う。きっと千彩は、そういった類のことに興味が無いのだ、と。

見た限りでは、髪も「伸ばした」と言うよりも「伸びた」と言う方がしっくりくるし、女の子には欠かせないだろう顔の手入れもしている様子は無い。寧ろメイク道具さえ持ち合わせていないのだ。


「恵介…泣くかな」


今頃上司に叱られているだろう恵介とは、恵介が衣装集めに回っていない限りはスタジオか事務で顔を合わせる。その時のに見ることになるだろう衝撃的な表情が安易に想像でき、晴人は一人苦笑いを零してベッドルームを後にした。

「出掛けるでー」
「はーい」

カウンターチェアから飛び降りて飛び付く千彩を抱き留め、玄関へと手を引く。

けれど、留守番を免れご機嫌なはずの千彩が、玄関でサンダルを見た途端しかめっ面をして立ち止まった。

「はい、足貸して」
「これイヤ。履くのも脱ぐのも面倒くさい」
「恵介は見た目主義やからな」
「ちさ、運動靴がいい」
「運動靴って。そういやスニーカーは買わへんかったな。休憩の時にでも買いに行こか」
「うん!」

その満面の笑みで、どんなに贅沢な不満でも許してしまう。呆れた顔で恵介に甘いと言われるも致し方ない。と、千彩の頭にお揃いのキャップを被せて部屋を出た。


梅雨明けしたばかりの晴れた空が、晴人にはやけに清々しく感じた。
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