Secret Lover's Night 【連載版】
「なぁんだ。やっぱガキはガキ扱いなんじゃん」
カップがデスクに置かれる音と、そんな声が聞こえたのはほぼ同時だった。
思わず睨み上げそうになる晴人を、苦笑いを浮かべた恵介が「まぁまぁ」と窘めて声を掛ける。
「どないしたん?沙織ちゃんがコーヒー淹れてくれるなんか珍しいやん」
「だって、ハルさんのソレが終わらないと撮影出来ないんだもん」
「ハル待ち?」
「そぉゆぅことぉ。だから邪魔しないでね、お嬢ちゃん」
ビクリと千彩の肩が揺れ、離すのに苦労するはずだった体が一瞬にして遠ざかる。そして、反対側にあった恵介の腕の中へとすっぽりと収まった。
そうなのだ。
確かにそうなのだけれど。
モデルを待たせて、先に昨日片付くはずだった仕事をしているのは自分なのだけれど、どうも言葉に棘があり過ぎて呑み込めない。普段ならば笑ってのらりくらりとかわすのだけれど、千彩と出会ってからの晴人は違っていた。
「やめようや、そうゆうの」
「なぁに?ハルさんこの子庇うわけ?だって、邪魔してんじゃん」
「邪魔してんのはケイであってこの子とちゃう。これ以上俺の機嫌損ねるようなこと言うんやったら、今日の沙織ちゃんの撮影キャンセルするから」
そこまで言い終えて、恵介の肩口にピタリと額をくっつけている千彩の頭をゆっくりと撫でる。それにまでビクリと肩を揺らす千彩が、か細い声を押し出した。
「ごめん…なさい。ちさが居て…ごめんなさい」
その言葉に、晴人の中の何かが突如プツリと音を立てて切れた。
「おいで、ちぃ」
「イヤ。ごめんなさい」
「千彩」
「ハル、ちーちゃん怖がってるから。な?」
「お前は黙っとけ。千彩は俺のや」
とうとう泣き出した千彩を恵介が庇おうとするも、晴人の怒りは最早どこに向いているかさえわからない状態で。椅子が倒れそうなくらいの勢いで席を立ち、千彩の手を強引に引いて抱き寄せた。
「お前のせいとちゃう。わかったか?」
「…ごめんなさい」
「ごめんなさいは要らん」
「ごめっ…」
言いかけた千彩の口を塞ぎ、じっと目を見つめる。そして、上司を振り返った。
「織部さん、ちょっとスタジオ使いますよ」
「おっ…おぉ」
「沙織ちゃんの撮影キャンセルで。俺はもう二度と撮りません」
「おいっ!」
「他にやらしてください。俺はもう沙織ちゃんを綺麗に撮る自信が無い」
そう言い放ち、晴人は未だ涙を零す千彩の手を引いた。
そして、重苦しい音を立てて開くスタジオの扉を一気に押し開けて引き込み、そのまま鍵を閉める。
作り上げられた密室には、二人分の足音と千彩の泣き声がやけに大きく響いた。
カップがデスクに置かれる音と、そんな声が聞こえたのはほぼ同時だった。
思わず睨み上げそうになる晴人を、苦笑いを浮かべた恵介が「まぁまぁ」と窘めて声を掛ける。
「どないしたん?沙織ちゃんがコーヒー淹れてくれるなんか珍しいやん」
「だって、ハルさんのソレが終わらないと撮影出来ないんだもん」
「ハル待ち?」
「そぉゆぅことぉ。だから邪魔しないでね、お嬢ちゃん」
ビクリと千彩の肩が揺れ、離すのに苦労するはずだった体が一瞬にして遠ざかる。そして、反対側にあった恵介の腕の中へとすっぽりと収まった。
そうなのだ。
確かにそうなのだけれど。
モデルを待たせて、先に昨日片付くはずだった仕事をしているのは自分なのだけれど、どうも言葉に棘があり過ぎて呑み込めない。普段ならば笑ってのらりくらりとかわすのだけれど、千彩と出会ってからの晴人は違っていた。
「やめようや、そうゆうの」
「なぁに?ハルさんこの子庇うわけ?だって、邪魔してんじゃん」
「邪魔してんのはケイであってこの子とちゃう。これ以上俺の機嫌損ねるようなこと言うんやったら、今日の沙織ちゃんの撮影キャンセルするから」
そこまで言い終えて、恵介の肩口にピタリと額をくっつけている千彩の頭をゆっくりと撫でる。それにまでビクリと肩を揺らす千彩が、か細い声を押し出した。
「ごめん…なさい。ちさが居て…ごめんなさい」
その言葉に、晴人の中の何かが突如プツリと音を立てて切れた。
「おいで、ちぃ」
「イヤ。ごめんなさい」
「千彩」
「ハル、ちーちゃん怖がってるから。な?」
「お前は黙っとけ。千彩は俺のや」
とうとう泣き出した千彩を恵介が庇おうとするも、晴人の怒りは最早どこに向いているかさえわからない状態で。椅子が倒れそうなくらいの勢いで席を立ち、千彩の手を強引に引いて抱き寄せた。
「お前のせいとちゃう。わかったか?」
「…ごめんなさい」
「ごめんなさいは要らん」
「ごめっ…」
言いかけた千彩の口を塞ぎ、じっと目を見つめる。そして、上司を振り返った。
「織部さん、ちょっとスタジオ使いますよ」
「おっ…おぉ」
「沙織ちゃんの撮影キャンセルで。俺はもう二度と撮りません」
「おいっ!」
「他にやらしてください。俺はもう沙織ちゃんを綺麗に撮る自信が無い」
そう言い放ち、晴人は未だ涙を零す千彩の手を引いた。
そして、重苦しい音を立てて開くスタジオの扉を一気に押し開けて引き込み、そのまま鍵を閉める。
作り上げられた密室には、二人分の足音と千彩の泣き声がやけに大きく響いた。