Secret Lover's Night 【連載版】
もう既に撮影の準備が済んでいたそこは、大きなベッドの上に無数の白い羽根が散らばっていて。コンセプトは「天使」だったか…と、千彩に向かって嫌な笑みを向けたモデルを思い出した。
「何が天使や、あほらしい!」
抑えきれなかった声に、千彩がグッと足を踏ん張った。そして、イヤイヤと首を振って悲痛な声を上げる。
「はる…はる、ちさが悪かったの。ごめんなさい。もうお仕事の邪魔しないから。ごめんなさい。ちさを捨てないで。ほかさないで…はる!」
叫びにも似たその声に、晴人はふと我に返る。慌てて引き寄せた千彩の体が、初めて会ったあの夜よりも震えていて。
グラリ、と目の前が揺れた。
「千彩」
「ごめん…なさい。ごめんなさい!」
酷い眩暈にも似たその感覚に耐え兼ねて、重い足を数歩進めて乱暴にベッドへと腰掛ける。引き寄せ、ギュッと腰を抱いた。
「千彩、ごめん」
「はる…」
「ごめん、千彩。俺が悪かった。ごめん」
今にも消え入りそうなその声に、驚いて言葉を詰まらせたのは千彩で。
「俺がな、お前の傍におるから。絶対守ったるから。だからな、もう怖がらんでええから。俺はお前を捨てたりせんから。絶対そんなことせんから」
いつも温かい眼差しを向けてくれる晴人の瞳は、涙で濡れていて。頬を伝うそれをどうにか止めようと、千彩は晴人の足の間にしゃがみ込み、そっと頬へと手を伸ばした。
「ちさね、はるのそばに居るよ?ずっとはると一緒に居るよ?だから…はる…泣いたらイヤ…」
頬を伝う温かさに、思わず目を瞠る。何年ぶりに泣いただろう…と、それを拭おうとするも、ピタリと寄せられた千彩の手でそれは叶わず。
次第にその量を増やしていく涙を、成す術もなくただただ溢れさせた。
「はるは、ちさをほかさへんでしょ?だから、ちさははるから離れへん」
懸命に言葉を紡ぐ千彩が愛おしくて。そっと瞼を下ろし、優しく紡ぎ出される音を頭と心に刻み込む。
「約束するよ?ずっと一緒におるから」
だから、どうか泣かないで。
そう続けられた気がして。ゆっくりと瞼を持ち上げると、やはり同じように頬に筋を作る千彩が居た。
「おいで?」
「はるぅ」
「よしよし。俺が悪かった。不安にさせてごめんな?」
ギュッと抱き締め、そっと頭を撫でる。肩口がじんわりと温かく濡れていくのを感じながら、離さぬように強く、もっと強く。
「ちぃは甘えん坊やからなぁ」
「はるは怒りん坊やん」
「ははっ。せやな」
ぐすりと鼻を啜る千彩が、涙声で抗議する。そんな千彩をそのままベッドに倒し、鬱陶しく掛る前髪をそっと撫で上げ、額へ、瞼へとキスを落とした。
擽ったそうに笑うその表情からは、もう涙の色は消えていた。
「何が天使や、あほらしい!」
抑えきれなかった声に、千彩がグッと足を踏ん張った。そして、イヤイヤと首を振って悲痛な声を上げる。
「はる…はる、ちさが悪かったの。ごめんなさい。もうお仕事の邪魔しないから。ごめんなさい。ちさを捨てないで。ほかさないで…はる!」
叫びにも似たその声に、晴人はふと我に返る。慌てて引き寄せた千彩の体が、初めて会ったあの夜よりも震えていて。
グラリ、と目の前が揺れた。
「千彩」
「ごめん…なさい。ごめんなさい!」
酷い眩暈にも似たその感覚に耐え兼ねて、重い足を数歩進めて乱暴にベッドへと腰掛ける。引き寄せ、ギュッと腰を抱いた。
「千彩、ごめん」
「はる…」
「ごめん、千彩。俺が悪かった。ごめん」
今にも消え入りそうなその声に、驚いて言葉を詰まらせたのは千彩で。
「俺がな、お前の傍におるから。絶対守ったるから。だからな、もう怖がらんでええから。俺はお前を捨てたりせんから。絶対そんなことせんから」
いつも温かい眼差しを向けてくれる晴人の瞳は、涙で濡れていて。頬を伝うそれをどうにか止めようと、千彩は晴人の足の間にしゃがみ込み、そっと頬へと手を伸ばした。
「ちさね、はるのそばに居るよ?ずっとはると一緒に居るよ?だから…はる…泣いたらイヤ…」
頬を伝う温かさに、思わず目を瞠る。何年ぶりに泣いただろう…と、それを拭おうとするも、ピタリと寄せられた千彩の手でそれは叶わず。
次第にその量を増やしていく涙を、成す術もなくただただ溢れさせた。
「はるは、ちさをほかさへんでしょ?だから、ちさははるから離れへん」
懸命に言葉を紡ぐ千彩が愛おしくて。そっと瞼を下ろし、優しく紡ぎ出される音を頭と心に刻み込む。
「約束するよ?ずっと一緒におるから」
だから、どうか泣かないで。
そう続けられた気がして。ゆっくりと瞼を持ち上げると、やはり同じように頬に筋を作る千彩が居た。
「おいで?」
「はるぅ」
「よしよし。俺が悪かった。不安にさせてごめんな?」
ギュッと抱き締め、そっと頭を撫でる。肩口がじんわりと温かく濡れていくのを感じながら、離さぬように強く、もっと強く。
「ちぃは甘えん坊やからなぁ」
「はるは怒りん坊やん」
「ははっ。せやな」
ぐすりと鼻を啜る千彩が、涙声で抗議する。そんな千彩をそのままベッドに倒し、鬱陶しく掛る前髪をそっと撫で上げ、額へ、瞼へとキスを落とした。
擽ったそうに笑うその表情からは、もう涙の色は消えていた。