Secret Lover's Night 【連載版】
嫉妬は女を醜くするって本当だ…と、そんな風に思いながら。

実際今のリエの顔は、嫉妬の色でどす黒く彩られ見るものを不快にする。

「王子はああゆう…何て言うの?ちょっと女の子を軽く扱っちゃうような奴だからさ、素直にぶつかってくれる女の子の方がいいと思うんだよね、俺は」
「私は…」
「駆け引きとか、そうゆうのに疲れちゃったんじゃないかな?ほら、リエちゃん素直じゃないから」

その言葉に、リエがポツリ、またポツリと話し出す。

「私…晴の本名も教えてもらえなかったの。家の場所だって、タバコ吸うことだって知らなかった」
「うん」
「でも…あの子は当たり前のように家に居て…」
「王子が連れて来たみたいだしね。家族も友達も居ないってことは、どっかから出て来たんじゃないかな?ほら、関西弁だったし」
「あんな優しい顔…私にはしてくれなかった。なのにあの子にはして…当たり前のようにあの子はそれに甘えてて…声だってうんと優しかったのよ」
「あー、王子は姫に甘いからね。随分可愛がってるみたい」
「悔しかったの、私…負けたって思いたくなかった」
「あんな子供に?」
「そう…あんな子供に」

そこまで言って、リエはふぅっと息を吐く。やれば出来るじゃないか。と、メーシーは素直に喜んだ。そして、「これ見て?」と、一枚の写真をリエに手渡す。


「負け…よね、私の。完全に。私はこんな風に晴に撮ってもらえなかったもの」


涙で目を潤ませながらリエが見つめているのは、昨日晴人が撮った千彩の写真。

両手を広げ満面の笑みの千彩は、まさに「大好き!」と言っているように見える。それが気に入って、広告用に使うものを余分に刷ってもらい、手帳に挟んでおいたのだ。

勿論、そこに恵介が案ずるような不純な想いは無く、疲れた時の癒し用として。

「応援してあげなよ。本気みたいだよ?王子。じゃなきゃこんな写真撮れないって」
「そう…ね」
「リエちゃんにはリエちゃんのいい人がいるって」
「佐野さん…とか?」

素直になったらねー。と軽く笑い、手の中の写真を抜き取った。それを手帳に挟み直し、ホッと一息つく。

今度王子の奢りで飲みだな。などと不純なことを思いながらも、二人の小さな恋を応援する人物がここにも一人。
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