灯火-ともしび-
無防備な顔で眠る夏海さんをとりあえずベンチに座らせる。


「うわっ…!」


そのまま傾いでいく身体を両手で止めて、ゆっくりと横たえる。
頭とかぶつけられたら嫌だし。


俺は眠る夏海さんの顔の近くにしゃがんだ。
寝顔を見るのはもちろん初めてだ。


「…可愛いよなぁ、ほんと。」


夏海さんは無自覚だろうけど、夏海さんって本当に可愛いって思う。
守ってあげたいとかそんなことは思わなくて、ただ辛いときとかちょこっと支えてあげられたらなぁとか…今の俺には無謀な話だけど。


「すーすー…んー…。」


ごろんと寝返りを打つ。
…完全に寝ている。


さて、どうしたものか。
さすがにお姫様だっこは目立つしな。無難におんぶにしよっか。


「夏海さん?ちょーっとだけ起きてください?」


俺は少し強めにゆすってみる。


「んー…な、なぁに?」


少しだけ開いた目の焦点はもちろん定まっていない。
とろんとした目で俺を見る。


「背中、乗ってください。」

「んー…なんでぇ?」

「…帰るためですよ。」


…どうしよう。なんだこの夏海さんすっごい可愛い。

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