灯火-ともしび-
灯火
* * *


燈祭り当日。


「小夏ー!髪お願いー。」

「え、こんな時間に?」

「あんたの方が本命だもの。私のはオマケでいいの、オマケで。」


時間は2時。
待ち合わせは駅前に18時だけれど、小夏にだって準備はあるし小夏の方が気合いを入れるべきなのは明白だ。
よって私の準備に小夏の時間を大幅に割いてもらうことなど出来ない。


「…でも…。」

「いいからいいから。さくっとやっちゃって。
私、こういうの不得意だから。」

「…分かった。」


髪だけ小夏にやってもらって、行く1時間前くらいから浴衣に着替えてメイクをする。


「お姉ちゃんは浴衣買ったの?」

「いや、買ってないよ。」


小夏の細くて小さな指が櫛を持つ。
優しく私の髪をすきながら、どうしようかと考えているみたいだ。


「え、じゃあ…。」

「お母さんが前に着てたやつを借りるよ。お金もないし。」


借りたのは紺の浴衣。
柄は…これはなんなのだろう、ご想像にお任せする。
とにかくあまり目立たない、紺の浴衣だ。

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