灯火-ともしび-
「ってあの紺のやつ?」

「そうそう。」

「…綺麗…かも。」

「え?」

「お姉ちゃんが着たらすごく綺麗かも!
わたし、髪も頑張るね!」


…妙な気合いが入ってしまった。
私の髪なんて頑張らなくていい。あんたは自分のことをまず頑張ればいいのに。


そうは思うものの、純粋に向けられるやる気を削ぎ落すほど私は悪人じゃない。
小夏が頑張ってくれると言うならもちろん任せる。


小夏は洗面台からアイロンを持ち出し、コンセントに差した。


「アイロン?」

「うん!お姉ちゃんは美人だからあんまりいじらないほうが自然で綺麗だと思うんだ!」


…あまりにキラキラとした表情でそう言われれば悪い気はしない。
どうやら年下に好かれる属性はやはり小夏を筆頭に始まっていると思う。


「よしっ!」


小夏が小さく拳をぐっと握って気合いを入れている。
アイロンを持ち、私の肩にかかるかかからないかくらいの髪を少しボリュームが出るように軽く巻いている。


鏡に映る、ふわふわとした髪。
…やっぱり小夏は上手い。

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