灯火-ともしび-
20分ほどで全体を軽く巻き終えた。
いつもはほとんど手入れなしでそのまま流している私の髪が、まるでいわゆる女子大生のようにふわふわのボリュームを出している。


サイドを少しねじってきゅっと上げ、そこに朱色の花のコームを差す。
普段ヘアアクセサリーなんて付けないが、小夏は私の趣味を理解しているなと思う。
派手すぎず、それでいてそれなりにアクセントになる配色と配置。


「…ど、どうかな?」


小夏が不安げに鏡越しに問いかけてきた。
私はもちろん笑顔で応える。


「上手。小夏、腕上げたんじゃない?」

「ほんと?」

「本当。私は嘘を吐かない。」

「良かったぁ!わたし、お姉ちゃんの役に立てた?」

「うん。役に立ちました。ありがとう。」

「良かったぁ~…。あ、じゃあ最後に仕上げするね。簡単に崩れないように…。」


そう言って髪型をキープするためのスプレーを全体にかける。
ほのかに香りがするが私の嫌いな香りではない。


「これで…多分夜までは大丈夫だと思う。ハードにしたし。」

「暴れたりしないから大丈夫よ。
自分のはどうするか決まってるの?」

「うんっ!後ろで編み込んでね、これでまとめるの!」


白い花のついたかんざしがすっと差し出される。
…小夏にとてもよく似合いそうだ。

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