灯火-ともしび-
するといつもは私の頭上にある彼の頭がふっと右肩に乗った。


「…どうしたのよ?」

「ただのヤキモチです。」

「なんで小夏に?」

「だって夏海さん、小夏ちゃんの話する時一番いい顔するから…。」

「はい?」


彼の意図するところが分からない。
…いい顔ってそもそも何…?


肩に乗った彼が何だか年相応に見える。というか年よりも幼いかもしれない。
思わずそんな彼の髪を右手で撫でる。


「なんかやけに素直ね…。」

「酷いなぁ…俺はいつだって素直ですよ。」

「はいはい。」

「あ、手、止めないでくださいよ?」

「はい?」

「…ちょっと気持ち良いです。」

「あ、そ…。」


口元が笑っているのが見える。
だから手はあえて止めない。


「…俺にもちゃんと笑って下さい。」

「笑ってる…と思うんだけど、一緒に居る時も。」

「笑ってるけど、なんか小夏ちゃんとは違うっていうか…。」

「だって小夏は家族よ?ずっと見てきて、あの子の一番近くに居て、悩みとか全部聞いてあげて…。」

「今も夏海さんの一番近くにいるのは小夏ちゃんですか?」

「え?」

「流馬じゃないんですか?小夏ちゃんの一番近くに居るのは。」


拗ねたような声でそう言う風馬の言いたいことがなんだかちょっと分かってきた。

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