灯火-ともしび-
「…そうかもしれないわね。今あの子の一番近くに居るのは私じゃない。」

「夏海さんの一番近くに居るの、俺だって思ってもいいですか?」

「…どうしたのよ?ぽくないわね。」

「だって…ホント小夏ちゃんの話する時、俺に見せない顔するから…。」


珍しく気弱な風馬が…なんていうか…


「可愛いわね、今日。」

「可愛いって言わないでください。年下男子は可愛いって言葉に敏感なんですよ?」

「だって、いつもの余裕がないから…つい。」


ちょっとだけシュンとする風馬がらしくないから可愛い。
…でも、ずっとこの状態は…少し面倒だ。
だから少しだけ、本当のことを。




「私、風馬にしか見せない顔、あるけど?」

「え?」


ぱっと顔を上げて私を見つめる。
その顔はあどけなくて、まさに年下。


「小夏の前では完璧な〝お姉ちゃん〟だからね。
私は風馬のお姉ちゃんじゃないし、顔は違うと思うけど。」

「…っ…夏海さん!大好き!」

「わっ…もう!」


へこんでいたのも嘘のように私に抱きつく風馬。
…うん、この方が〝らしい〟。


「大好き大好き大好きー!」

「分かってるわよ。」

「夏海さんは俺のこと好きですか?」

「…分かってるでしょ?」

「分かってるから聞きたいんです。」

「…絶対言わない。」

「えぇー!言わないとちゅーしちゃいますよ?」

「…すればいいじゃない。」

「え…。」


*fin*

< 69 / 85 >

この作品をシェア

pagetop